事業再生コンサルコラム 2024年12月15日号

ファクタリングは諸刃の剣

ファクタリング、という言葉を聞いたことはありますか?

実際に使われているかたはもちろんご存じと思いますが、そうでない方は「どっかで聞いたことあるかな?」くらいの感じかと思います。

 

ファクタリングとは、売掛金を他者(ファクタリング業者)に売り渡し、対価を得ることをいいます。事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。

 

 

ファクタリングをする理由ですが、急なお金が必要になったにもかかわらず、資金準備が足りない場合の手当てや、銀行から新規借り入れが難しい状況の際の資金調達手段として利用されることが多いです。

 

また、売掛金は締め日の関係で、請求から最長2か月後の資金回収となります。運転資金の準備がない場合は仕入費用の支払ができない、つまり、資金繰りがつかないため、早期現金化の手段として用いられることもあります。

 

売却して得られる対価は、当該債権の額から手数料や必要経費を差し引いた残額になります。率にすると、10~20%、高いところですと30%程度となるところもあるようです。

たとえば500万円の売掛金をファクタリングしたすると、手数料率20%なら手数料額は100万円なので、手元に来る現金は400万円となります。

 

ファクタリングの怖さ

 

売掛金を早期に現金化できるサービスは時として助かりますが、会社財務を蝕む諸刃の剣ともなります。特に利益率が手数料率より低い場合は致命傷です。

売掛金額の何%で買い取ってくれるか、会社全体の売掛金のどのくらいの割合をファクタリングするかによっては、先々資金難に陥ることは間違いありません。

 

その理由を説明します。

 

売掛金はもとはといえば売上です。売上を作るのには仕入などの費用が一般的には必要です。物を作って売るにも材料は買わなければなりません。

 

この売上を作るのに直接要した費用すなわち原価、この原価の売上比(原価率)が85%とすると粗利は15%、この15%で家賃などの販管費を賄うことになります。

 

ここで、売掛金を現金化するのに20%の手数料を取られたらどうなるでしょう?

 

例えば、500万円分の売掛金があったとしましょう。

手数料20%なら売却して400万円を手にすることが叶います。

業績悪化できつくなった借入金の返済にも充てられます。

 

しかし、よく考えてください。

売上(=売掛金)500万円で原価率85%なら原価は425万円です。

普通に売掛金を回収すれば500万円もらえて、原価も支払えますね。

しかし、早期に現金化することにより400万円しか手にできないわけです。

これでは原価の支払にも足りません。販管費も全く賄うことができません。

 

これが原価率50%と原価が低いような場合ではどうでしょう。

同じく500万円の売掛金をファクタリングして400万円を返済に充てました。

支払うべき原価は250万円なので、たとえ20%の手数料を支払っても販促費に充てる分は残ります。家賃などもありますからね。

 

なので、利幅が結構取れるような事業なら、儲けを薄めても早く資金化するメリットも見いだせるかもしれません。が、そうでなければかなりコストのかかる取引だということは認識しておくべきです。

 

また、いまいま必要なお金をファクタリングで作ることはできますが、作ったお金はすべて自分のものではなく、仕入れなどの費用が含まれているものです。これを全部他の使途に使ってしまえば、当然仕入費用などは当該現金化分では払えません。

 

しかしお金は用意しなければ事業が続けられないので、仕入支払分を翌月のファクタリングで準備するという自転車操業に陥ります。

 

利益が十分出るような事業でしたら越えられるハードルですが、そもそも資金繰りに困っているから早期現金化が必要なわけで、たいていは資金繰りに窮することになります。(翌月の売上が減っていたら尚更)

 

 

一時しのぎで計画的に利用する分には便利なファクタリングですが、売上に占める割合が大きくなったり、手数料が高くなったりすると首が締まります。

資金繰りを常にチェックし、できれば利用しないで済むよう、しっかり管理していきたいですね。

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