最近アベノミクスやら円安やらで、日本経済も息を吹き返し始めてますね(中小企業にはもうちょい先かな?)。
ここ10年、ネットバブル→円高ドル安→リーマンショック→東日本大震災→アベノミクスと、経済の浮き沈みを感じざるを得ないような景況の流れがありました。
経済産業省で出している統計で「企業活動基本調査」というものがあります。
こちらの統計では月ごと年度ごとの産業別売上や粗利額、営業利益の額などが示されています。
この統計がちょうど過去10年、平成15年から24年まできちんとしたものがありまして、こちらをじっくり見ていけば、どの業種がここ10年で儲かったのか、そうでなかったのか、がわかります。
しかし統計データはなんだか見づらく、また、表計算の基資料としては非常に使いづらい感じです。
が、そこは気合いと根性で乗り越えて、分析してみます。
で、各産業ごとに年度次で折れ線グラフにしてみました。(鉱業の数値は右軸)
売上額で比較しても業種特性でサイズがだいぶ変わるものですから、今回は営業利益率で比較して見ています。
しかし鉱業、採石業、砂利採取業の利益率が目を引きますね。
他の産業の3~4倍の営業利益率です。浮き沈みも激しいですが、総じて高い利益率です。
まあ、だからといってなかなか参入できる業種ではありませんが。だからこそ高い利益率なのかもしれません。残念です。
他、目立つのはクレジットカード屋さんですね。
こちらは上げ下げが激しい10年間です。平成17年から利益率がドカンと下がります。これは貸金業法改正の影響ですね。最近回復してきているのは、売上が変わらないところを見ると、コスト削減の効果でしょうね。
さて、経済環境の変化としては、円高ドル安が平成19年ころ始まります。
1ドル120円から5年後には76円とすごい上昇を見せました。
今はちょうどその平成19年ころの水準ですね。
そのころ、製造業の利益率がガクンと落ちます。
競合先が海外企業になって、価格で対抗するため、利益を確保できなくなった感じでしょう。
そして追い打ちをかけるようにリーマンショック。平成20年です。
低い利益率が横バイとなっています。
それでもここ近年は徐々に回復してきています。が、ここはトヨタのような大企業も含んでの数字なので、下請け中小企業の利益率とはちょっとリンクしない肌感ですね。
平成23年には東日本大震災が発生しました。
原発事故の影響から電気ガス業は一気にマイナスの利益率になっています。
順調なところでいうと、生活関連のサービス業、娯楽業は利益率が上昇していますね。
目立つところではこのような感じですが、直近の利益率が高い業種を上からあげていくと、
1位 鉱業、採石業、砂利採取業
2位 クレジットカード業、割賦金融業
3位 生活関連サービス業、娯楽業
4位 サービス業(その他のサービス業除く)
5位 情報通信業
6位 サービス業(その他のサービス業)
7位 物品賃貸業
8位 その他の産業
9位 学術研究、専門・技術サービス業
10位 個人教授所
11位 飲食サービス業
12位 製造業
13位 小売業
14位 卸売業
15位 電気・ガス業
となっています。
最下位の電気ガス業はマイナス利益です。
サービス業が上位に入っていますね。
基本的に売上は小さいが粗利が高いという商売なので、ここはうなずけます。
総じてリーマンショック以降は上げ基調にあるのは少々驚きですね。
では、ここ10年の売上増加率と営業利益増加率を見てみましょう。
以下、売上増加率上位から並べています。
サービス業(その他のサービス業を除く)
(売上増加率)350.9%(営業利益増加率)432.2%
生活関連サービス業、娯楽業
(売上増加率)133%(営業利益増加率)330%
鉱業、採石業、砂利採取業
(売上増加率)120%(営業利益増加率)151%
学術研究、専門・技術サービス業
(売上増加率)91%(営業利益増加率)257%
飲食サービス業
(売上増加率)30%(営業利益増加率)67%
小売業
(売上増加率)29%(営業利益増加率)38%
情報通信業
(売上増加率)28%(営業利益増加率)35%
クレジットカード業、割賦金融業
(売上増加率)21.6%(営業利益増加率)30.1%
サービス業(その他のサービス業)
(売上増加率)18.6%(営業利益増加率)22.9%
物品賃貸業
(売上増加率)13%(営業利益増加率)30%
卸売業
(売上増加率)7%(営業利益増加率)9%
製造業
(売上増加率)-4%(営業利益増加率)-24%
その他の産業
(売上増加率)-21%(営業利益増加率)-10%
電気・ガス業
(売上増加率)-65%(営業利益増加率)-142%
個人教授所
(売上増加率)-66%(営業利益増加率)-78%
サービス業(その他サービス業を除く)の伸びが目立ちますが、ではどのようなサービス業なのかというと廃棄物処理や機械修理、派遣業、職業紹介業、ディスプレイ業、テレマ業、その他事業向けサービスがその中身です。
その中でも廃棄物処理とテレマーケティングは伸びてますね。
学術研究、専門・技術サービス業では、研究機関の伸びが大きいですが、写真業も伸びています。これはスタジオ・アリスさんのような事業が広まったことによるのでしょうね。
飲食サービス業は、持ち帰り・配達サービスが伸びています。一般の飲食店は横ばいですね。
ものづくり日本、の製造業はというと、、じり貧です。
ここ10年で日本の製造業は相当に弱まってます。
トヨタのような上場企業も含めてのこのパーセンテージですから、中小の部品メーカーなどはもう、死屍累々の状態かと思います。
ものづくりは関わる人数が多い商売ですので、与える社会的インパクトも大きいです。ちょっとした中小企業でも倒産すれば100人やそこいらの人が職を失うことになります。その100人には家族がいて、4人家族なら400人分の食い扶持がなくなるわけです。これは地域経済にとって小さくないインパクトです。
大きな工場になれば1000、2000の単位です。
なので製造業の調子が悪いと社会全体としてなかなか景気が底上げしません。
製造業、ものづくり日本の復活は景気回復の上でも大切なポイントなのです。
製造業は消費者向けの最終製品を扱っている企業は少数で、部品を作っている会社がほとんどですから、取引先が斜陽になれば(何も手を打たねば)自社も斜陽になります。
となると生き残り策は、景気が良い業種、業界向けの製品にいかに絡んでいくか。
上記のような景況動向などを参考にしながら、事業をどちらに進めていくか、営業戦略としてどのような手を打っていくべきか、現状にとどまらず、将来の布石を打ってまいりましょう。
池田
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