モラトリアム法とも呼ばれた金融円滑化法(別名、亀井法案)の施行が2009年12月。
当時はリーマンショックの影響から、売上低迷、通常に返済できない会社さんが続発していました。
それが円滑化法の施行により、銀行等金融機関が返済の猶予、リスケジュールに応じてくれるようになり、倒産を防ぐことができました。それからはや5年。
銀行さんからリスケしましょうか?と金融支援を受けるよう促してくださるような状況ですから、返済が厳しく夜逃げ的な話は時代遅れだし、借りて返済なんていうこともまさか無いよね。。
・・・と、思ってました。
でもあるんですね。
親しくさせてもらっている弁護士さんからのご紹介だったのですが、売上に比べ借入が過大で返済に四苦八苦している状況で、子供や親類から借りて返済に充てていました。
それももう続かず、さてどうしよう、という中で弁護士さんに相談されたようです。
で、どういう状況だったかといいますと、
売上300百万
原価200百万
粗利100百万
販管30百万
営利70百万
経利55百万
儲かってるんです。とても。
利益が出ないで参っている会社が多い中、粗利が約3割!
営業利益も2割超。経常利益もしっかり計上しています。
減価償却もちゃんとしての数字です。
そうです、ばっちり黒字です。
損益状況は大変良好です。
それでも返済が追い付かず、親戚縁者からお金を借りて返済に充てなきゃならないという話ですが、これだけ高収益体質で資金繰りが厳しいってどれだけ借入があるんだろ?というのが素朴な疑問ですね。
で、借入はいくらかというとこれが5億。売上の1.5倍です。
利払いだけで年15百万超!
借入期間は8年だったそうで、ですと年63百万の返済。
よくもこれだけ借りられたなー、貸したなーという印象ですが、こちら創業が古い会社さんで、所有している土地の評価が高く、それが担保になり、借りられたと想像します。
借りた当時は売上も現在の1.5倍ほどあったようで、利益率も現在同様ということですと、まあ借りすぎですけど、返せない額ではないな、という感じだったのでしょうね。
とはいえ、時代は過ぎ、構造的な変化が訪れ、利益率は相変わらず良好ながら、市場の縮小にともない売上ボリューム自体が下がってくると、事業収入からでは返済額に足らずが出てきます。
実際、経常利益が55百万、税後の利益は35百万なので元本返済63百万に28百万足りません。
減価償却が10百万ほどなので、実際のキャッシュ不足は18百万です。
これをどうにかこうにかかき集めて数年、もう手がない、という状況に陥ったと。
これ、解決策は簡単至極。
事業で返せる範囲に返済額を変更してもらうだけです。
具体的には返済期間を長期の格好に変更してもらうわけです。
8年返済だったのを16年と倍にすれば、返済額は半分になります。
今回の場合、半分だと32百万ほどですから、十分に返せていける計画です。
しかも、含み益のある土地がありますので、まさかのときはこちらを清算すれば貸し手にとってもとりっぱぐれはありません。
一方、いいことばかりではなく、負の側面もあります。
金融機関さんに長期化してもらうわけですから、債権者平等の原則からして、この血縁にも同様に長期化してもらうわけで、これは貸してくれた親戚縁者にとっては結構な負担です。虎の子を差出しさらに長期分割なのですから。
本来、今回の件においては、親戚縁者から借入をする必要は“まったく”なかったはず。。
金融機関さんの1千万と個人の1千万ではお金の価値が違います。返せないお金は借りてはいけません。特に身近な方に。
もうちょっとでも早く相談に足を向けてもらえていれば、とは思い、残念ではありますが、まだまだ復活できるので無理せず頑張ってもらいたいところです。
最近こういう感じの問題を抱えている会社さんに出会ってなかったので、もう無いものかと思っていましたが、まだまだいらっしゃるんですね。
返済が難しくなったら、人から借りる前に「難しい」と借りている金融機関に相談しましょう。
貸し手も借りて返せとはいいません。言ってはいけないことになってますので。
(言われたら金融庁の問い合わせ窓口へ相談)
その後金融機関さんに対し、どう返していくかという返済計画を提出しなければなりませんが、計画作りはちょっと骨が折れるかもしれません。
そんなときは私たちのようなコンサルタントや企業再建に明るい弁護士さんや税理士さんに相談なされると良いヒントを与えてくれると思います。(もちろん、手数料を払えば一緒に作ってくれます)
借りたお金で返済する以外にも方法はある、ということだけは知っておいてください。
不幸の連鎖を生み出さないように。
池田
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