先月、総合電機メーカーのシャープさんが1億円に減資を予定しているとのニュースがありました。結構大々的に報道されていましたので、皆さんお耳になさったことでしょう。
その際、某政治家さんが「いかがなものか」発言するなどして、結局5億円に減資、ということに落ち着いたようです。
せっかくですので、なぜいかがなものかなのも含めて、シャープさんが資本金を1億円にしようとしたその意図を、下衆の勘繰り、否、考えてみようと思います。
では、そのニュースの元ネタであります、シャープさんのいわゆる中経(中期経営計画)資料を見てみましょう。
資料見ますと、15年3月期には2032億円の赤字となり、株主資本がマイナス158億円という状態(いわゆる債務超過状態ですかね)になる予定となっています。
このマイナス状態を解消するため、増資との合わせ技をして、減資を行う、とこういう目論見のようです。減資をすると欠損の補てんができますので。
増資はDES(デット・エクイティ・スワップの略)を意味しています。
債務の返済を株式を発行することによって行う、つまり、債務の株式化です。
負債が減り、資本が増加する効果があります。
これにより2197億円の欠損補てんが出来、最終的に株主資本はマイナス158億円から2091億円となります。
これが減資の基本的な狙い。
でもいくら株主資本がプラスになったからといって、会社が潰れなくなるわけじゃないのですけどね。逆にキャッシュがある限り会社は潰れません。
あと、資本金1億円について。
こちら、まず浮かぶのは法人税法上の企業規模の区分け。
法人税法上、資本金1億円以下は中小企業とされています。
中小企業に対してはいろいろな税優遇がありますので、これを活用したい、というところがあったのでしょう。
資本金が1億円以下の会社だと出た利益の100%を繰越欠損金で控除できる一方、1億円を超える大会社となると、利益の80%までしか控除できません。
しかも、27年の税制改正大綱によれば、今後65%、50%と引き下げられる予定となっています。(繰越期間も9年→10年に延長されるようです)
再生局面に関しては、欠損金の繰り越しがキャッシュの確保の意味ですごく重要なので、おそらくこのへんが1億円とした意味ではないかなと思います。
ちょっと例をあげると、
1000億円の繰越欠損金があるとして、当期に100億円の利益が出たと仮定しましょう。
資本金1億円の中小会社なら税金はゼロ。なので(ざっくり)100億円手元に残ります。
でも大会社ですと最大半分しか控除できませんから、50億円の利益となりまして、法人税率が40%として20億円が税金。
その差20億円。
再生局面ですと、お金を貸してくれる銀行もないですし、資本を投下してくれる方も限られています。でも将来投資はしていかないと、会社の未来はないわけで。縮小均衡だけではいずれダメになりますし。
となると、その20億円は未来の会社のための、もう虎の子のお金。
10年となれば200億円も違ってくるわけで、開発費や投資の原資として使えるとても大切なお金です。
逆を言えば、国にとっては、200億円入ってこなくなるわけですね、税金が。
「いかがなものか」発言はその辺に起因していると思います。
制度的には活用しても何ら問題ないわけですから。
ただ、制度の趣旨は無視してますけどね、そんなわけで「君は中小企業じゃないだろ!」というツッコミが各所から沸き上がったのではないかと思います。
シャープも一時は液晶のシャープとして、AQUOSが売れに売れ、工場も増設したんですがねぇ。まさかそれが重荷になるとは、当時の経営陣は今どう考えているのでしょうか。
敗軍の将、後進のためにぜひ語ってもらいたいものです。
池田
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