さて、黒字化した会社が一転、倒産寸前までいってしまうその流れについてお話します。
赤字に陥った先々月の損益状況を見ると、
売上高 100
粗利 15
販管費 20
営業損失 -5
経常損失-10
営業利益、経常利益ともに赤字。
粗利率が15%なので、原価率は85%。
で、黒字化した先月。
売上高 90
粗利 30
販管費 20
営業利益 10
経常利益 5
営業利益、経常利益ともに黒字。
粗利率が33%なので原価率は67%。
すごーく改善しているように見えませんか?
でも売上は若干落ちてるんですよね。
粗利が倍に増えているのが改善(のように見える)の要因。
でもなんか変ではないですか?
一気に粗利が倍になるなんて、おかしいですよね?そうです、おかしいんです。
ここで粗利とは何だ、という知識が必要になるので少々ご説明します。
粗利とは売上から売上原価を引いたものです。
[粗利=売上-売上原価]
売上原価とは、もってた在庫に仕入を足して、残った在庫を引いたものです。
[売上原価=月初在庫+当月仕入-月末在庫]
売上が増えないのに粗利が増えたとすれば、売上原価が減少した、ということになります。
さて、売上原価が減少する要因は何でしょう。
月初の在庫と当月仕入、月末在庫すべて減少すれば、原価も当然減少しますが、そのほかにも原価を減少させる要因がありますね。
・月初の在庫と当月の仕入額を足したものが減る
・月末の在庫が増える
この2点です。
赤字だった先々月の売上原価の中身を見てみると、
月初在庫 30
+当月仕入 85
-月末在庫 30
―――――――――
売上原価 85(対売上高85%)
とこんな感じとなっています。
で、黒字の先月はというと、
月初在庫 30
+当月仕入 85
-月末在庫 55
―――――――――
売上原価 60(対売上高67%)
こちらに解説を加えるとこんな感じ。
月初在庫 30 ←先々月末の在庫とイコール
+当月仕入 85 ←先々月と同じ仕入高
-月末在庫 55 ←在庫増えてない!?
―――――――――
売上原価 60(対売上高67%)←在庫増えただけじゃん!
今回は月末の在庫が増えた、というのが原価率低減の理由だったんですね。
実は何も改善してなかったと。損益上利益は増えましたけど。
増えた在庫により、計算上原価が減少しただけの数字のマジックです。
とはいえ、増えた在庫は翌月に月初在庫となるわけで、トータルで言えばいったこい。今月の原価がドーンと上がるだけで平均すれば同じ。ならしてみれば特にどうこういう問題でもないです。残った在庫が確実に売れるのであれば。
次にお金的にはどうなってるかを見ていきます。
池田輝之
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