明日2月1日からいよいよ適用になる経営者保証に関するガイドラインについて、ここまで4回にわたりお話してきました。
時間の許さない方向けに、これまでの内容を以下ぎゅっとまとめてみますので、ご参照いただければと思います。
【ポイント】
●既存の保証を外すのは難しい
●事業承継時に保証を引き継ぐのは変わらない
●個人保証のない融資は当面無い
●生計費や華美でない自宅は残せる可能性はある
●経営者交代を一律形式的に強制しない
●何につけ、公私の別、適正な情報開示が求められている
個人保証は事業再生や起業に際してネックとなっているのは確かです。
個人保証の融資慣行を無くすため、金融機関に対しては個人保証に頼らない新たな融資手法が求められています。反面、中小企業経営者の側にも財務状況の正確な把握や公私の区別、資料の策定などが求められています。
しかし、財務状況がいくらきちんと把握できていて、しっかりと開示されたとしてもどこまでそれを信ずるか、というのは難しいところでしょう。
表明保証に適正性を付与といっても、付与した支援専門家を貸し手はどこまで信頼するのでしょうか? 中小企業は100%株主兼社長という所有と経営が分離されていないことが多いため、そもそもガバナンスが効いていない状態となっています。税理士等の支援専門家と呼ばれる人もどこまで自分を雇ってくれているワンマン社長に物申すことができるかという問題もあります。客観性が担保されない可能性も否めません。
金貸し(銀行)はシビアです。個人保証についてはそう簡単には無くならないと思います。逆に考えると、個人保証が要らないくらい(良好な財務状態)のところにしか融資をしなくなるのではないかと危惧しています。
再生時の保証債務返済については、画期的な指針が示されました。
自宅を残せるというのは事業再生にとって非常に(特に地方では)プラスです。
とはいえ、現在でも再生計画を認めていただければ、期限の利益を喪失した状況にはなりません。ついては、保証債務の履行を求められることもない状況です。 ということは、このガイドラインが2月から適用されても、実務上の対応はあまり変わらないかもしれませんね。
一方、廃業時の保証履行に関しては特段の記載はありませんでした。
再生が困難な企業に関する経営者保証についても、残存資産をこのガイドラインと同様に認めていただけると企業のライフサイクルが正常に回転し、新陳代謝が高まることに繋がると考えます。団塊起業世代が引退のタイミングにある昨今、行政の皆様にはぜひ検討していただきたいところですね。
池田輝之
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