【保証に依存しない融資方法や保証の見直し】
経営者保証に関するガイドラインは先に申しました通り、昨年平成25年12月5日に公表され、今年平成26年2月1日より適用になる、経営者保証の在り方等を示すとともに保証債務の整理を迅速公正に行うための準則です。
準則ですので法的拘束力はありませんが、金融機関もこのガイドライン策定に関わっている以上、自分たちの決めた事を守らないとお上の厳しいお沙汰があるのは火を見るより明らかです。つまり、保証周りはこのガイドラインに従う以外なし、ということになります。
で、その内容はといいますと、大きく分けて4つ、
1.経営者保証に依存しない融資の一層の促進
2.経営者保証の契約時の対象債権者の対応
3.既存の保証契約の適切な見直し
4.保証債務の整理
です。
そもそもですが、このガイドラインが適用される保証とは、以下のようなものです。
・中小企業であること
・保証人が経営者等の個人であること
・主債務者と保証人ともに弁済について誠実かつ財産状況を適時適切に開示していること
・反社会的勢力でないこと
やくざでない、まじめな中小企業の経営者が対象、ということですね。
ほぼ皆さん適用の範囲でしょう。
さて、個別内容を見ていきますと、まず1.の「経営者保証に依存しない融資の一層の促進」ですが、これは債務者側、債権者双方に求められているものがあります。
それは其々何かと言いますと、
債務者については、保証を提供しないで融資を希望する場合に必要なもの(公私の分離区分、財務基盤強化、財務状況の正確な把握と適正開示)、
債権者側については、融資手法メニュー(停止条件付保証契約やABLなど)の充実を図ることが求められています。
また、保証を求めない可能性についても検討することとなっています。 保証を求めない可能性について検討とはややこしい表現ですが、そういう可能性があるのは良いことです。
要件として、公私の区別がしっかりついており、借入返済が法人のみで可能であれば、という記載があるので、条件に当て嵌まる場合は保証なしでの融資も検討してくれるはずです。
実際のところは難しいかな、と予想されますが、チャレンジされても良いかもしれません。
次に「経営者保証の契約時の対象債権者の対応」について見ていきます。
ここでは、「いろいろ(保証なしで可能か)検討してみたけど無理でした。」というパターンの場合に債権者(貸す側)がすべき対応内容について記載されています。
具体的内容としては、
・必要性や履行の範囲、解消の可能性についてきちんと説明すること
・適切な保証金額を設定すること
となっています。
適切な保証金額の設定についてはまだ後がありまして、保証債務の整理について、このガイドラインの趣旨に沿った対応はどのようなものなのか、も載っています。
重要なので原文そのままご紹介します。
イ)保証債務の履行請求額は、期限の利益を喪失した日等の一定の基準日における保証人の資産の範囲内とし、基準日以降に発生する保証人の収入を含まない。
ロ)保証人が保証履行時の資産の状況を表明保証し、その適正性について、対象債権者からの求めに応じ、保証人の債務整理を支援する専門家(弁護士、公認会計士、税理士等の専門家であって、全ての対象債権者がその適格性を認めるものをいう。以下「支援専門家」という。)の確認を受けた場合において、その状況に相違があったときには、融資慣行等に基づく保証債務の額が復活することを条件として、主たる債務者と対象債権者の双方の合意に基づき、保証の履行請求額を履行請求時の保証人の資産の範囲内とする。 また、対象債権者は、同様の観点から、主たる債務者に対する金融債権の保全のために、物的担保等の経営者保証以外の手段が用いられている場合には、経営者保証の範囲を当該手段による保全の確実性が認められない部分に限定するなど、適切な保証金額の設定に努める。
いかがでしょうか。 小難しくは書いてありますが、保証履行タイミングを定めてそれ以上は保証しないような保証契約内容にしなさい、担保がある場合はそれで保全できない範囲のみの保証としてね、ということですね。
というと不動産担保融資で融資金が担保保全範囲内であれば個人保証要らない、ということになりますね。そもそも個人の資力などたかがしれているので合理的な方針かと思います。
重要なポイントが次に控えています。 「既存の保証契約の適切な見直し」です。
果たしてこんなことができるのか!?興味深いですが、まず、債務者と保証人について条件があります。
「主たる債務者及び保証人は、既存の保証契約の解除等の申入れを対象債権者に行うに先立ち、第4項(1)に掲げる経営状況を将来に亘って維持するよう努めることとする。」
将来にわたって維持するよう努めるって、言語明瞭意味不明の世界ですね。
具体的なことはよくわからないですけれもまず、第4項(1)の状況であるのが大前提ですね。
第4項(1)とはどういうものかといいますと、「経営者保証に依存しない融資の一層の促進」における「主たる債務者及び保証人おける対応」で、具体的には、公私の分離・区分、財務基盤強化、財務状況の適正開示と透明性確保です。
財務基盤強化とありますが、これがどのような財務状況のことを指すのか、本文には記載がないのですね。そこで想定問答集を紐解いてみますと、ありました。
Q.4(1)②について、「財務状況及び経営成績の改善を通じた返済能力の向上等により信用力を強化する」とありますが、具体的にはどのような財務状況が期待されているのでしょうか。
A.経営者個人の資産を債権保全の手段として確保しなくても、法人のみの資産・収益力 で借入返済が可能と判断し得る財務状況が期待されています。例えば、以下のような状 況が考えられます。
➢業績が堅調で十分な利益(キャッシュフロー)を確保しており、内部留保も十分であ ること
➢業績はやや不安定ではあるものの、業況の下振れリスクを勘案しても、内部留保が潤 沢で借入金全額の返済が可能と判断し得ること
➢内部留保は潤沢とは言えないものの、好業績が続いており、今後も借入を順調に返済 し得るだけの利益(キャッシュフロー)を確保する可能性が高いこと
絶対潰れそうにないような財務内容だったり、潤沢とはいわないまでも将来性満点、みたいな特殊パターンの場合は保証人無くてもOKと、まあ中小企業にはあまりないパターンの場合のみ、保証契約の見直しが可能のようです。
そもそも保証債務を履行する可能性がほぼゼロなわけですから、逆に保証を外すという要望もないものと思いますが。
ほか、団塊世代が引退を迎える時期にさしかかっている昨今、気になるのが事業承継時の保証債務の後継者への引継問題です。
保証協会付融資は代表者の個人保証が絶対ですからね。事業承継で代表が替わると問題になるのがこれです。
実務的には両代表(代表取締役会長&代表取締役社長のコンビ)とかで対応してしまいますが、なにか解決策はあるのでしょうか? そのような目線でガイドラインを眺めますと、特に無いように見受けられます。引き継ぐのは大前提で変わりはないようですね。
むしろ、前経営者の保証解除について明記がありまして、「債権者は、前経営者から保証契約の解除を求められた場合には、(略)適切に判断することとする。」となっています。保証解除しても問題ないと金融機関が考えた場合は外せます、ということと読みました。となると、従前となんら変わりがないことになりますね。
そして、最後「保証債務の整理」について。
ここは本文でもしっかりとボリュームをとっています。大事なところでもありますので、また次回、詳細を見ていくことにします。
池田輝之