事業再生コンサルのコラム、今回は不況の時でも儲かっていたのはどこ?というテーマで、お話していきたいと思います。
さて、新型コロナ感染症をきっかけに長らく続いてきたほどほど良い景気もついに不況入りの匂いがしてきました。ちょっと前まで、人手不足、人手不足と騒いでいたと思ったら、飲食店は閑古鳥、と時の流れを読むのは難しいですね。まったく景気のながれは神のみぞ知る、神の見えざる手は、あざ笑うかのように残酷です。
さはさりながら、不況は不況で食べていかなくてはいけません。経営者たるもの、むしろ好機到来と武者震いしてもらいたいところでもあります。そこで、過去の不況時にどんな産業が儲かっていたか、直近リーマン・ショックの事例を調べてみました。
使用したデータは、経産省の企業活動基本調査です。データに記載の業種は大分類で全15種(鉱業・採石業・砂利採取業、小売業、クレジットカード業・割賦金融業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、サービス業(その他のサービス業))です。建設、不動産がないのが惜しいですが、今回はよしとしましょう。
このデータから、営業利益を中心にリーマン前の平成19年度とそれ以降を業種別に比較し、その増減推移で好不調を判断します。では、リーマンショック(H20/9)時の営業利益と前年営業利益の比較から見てみましょう。
上振れた業種は全15業種中の2業種ありました。
データの並びは業種、営業利益、前年比の順です。
・クレジットカード業、割賦金融業 140,054M 20.0%増
・生活関連サービス業、娯楽業 158,538M 15.6%増
生活関連サービス業については、洗濯業、公園、遊園地・テーマパーク、スポーツ施設提供業が伸びています。
下振れた業種は他13業種ですが、中でも目立つものが、
製造業 4,925,521M 71.3%減
卸売業 1,543,870M 58.9%減
電気・ガス業 468,941M 49.5%減
個人教授所 3,252M 49.2%減
物品賃貸業 206,519M 40.8%減
製造業の減速がかなり激しいですね。
特に木材・木製品製造、石油製品・石炭製品製造業、非鉄金属製造業、情報通信機械器具製造業、輸送用機械器具製造業は100%~200%減少と壊滅的な状況です。
次に、リーマン・ショックは来たものの、その後3年内にリーマン前の数字に回復した業種を調べてみました。
8業種はリーマン前の水準に営業利益を戻してきています。
鉱業、採石業、砂利採取業
小売業
クレジットカード業、割賦金融業
物品賃貸業
学術研究、専門・技術サービス業
飲食サービス業
生活関連サービス業、娯楽業
サービス業(その他のサービス業)
個別に目立つところとして、学術研究、専門・技術サービス業では平22年の広告業営業利益が3倍増、写真業も大きく伸びています。広告はネット広告でしょうね。本格的にインターネット広告が増加した時期と思います。写真はスタジオアリスとか、マリオとか新業態の写真館が増えましたね。
小売は飲食料品中心に全般伸びていますが衣服織物は伸びていません。不況時のアパレルはきつい印象。レンタル、リースがカーリース中心に全般的に伸びています。
生活関連サービス業、娯楽業では公園、遊園地・テーマパークが着実な伸びが見えます。
映画館は当たり外れの波が大きくて景気云々ではなさそうな感じ。
一方、残念ながらリーマン前に水準に回復しなかった業種もあります。
電気・ガス業(平23/3東日本大震災発生のため)
製造業
情報通信業
卸売業
個人教授所
サービス業(その他のサービス業を除く)
その他の産業
電気ガスは平23年3月の東日本大震災の影響でやむなしかと思いますが、製造業の戻りが悪く、むしろ、一層悪化と泣きっ面に蜂状態です。今になって、ものつくりJAPANとか言ってますが、円高にリーマン・ショックで製造業は焼け野原に近い感じですね。
情報通信サービス業は情報処理・提供サービス業が孤軍奮闘も、ソフトウェア、出版、新聞、映像など足を引っ張り全体としてマイナスでした。ソフトウェアも企業需要なので弱いのかもしれません。
いかがでしょう。なにかヒントになるようなものがありましたでしょうか。不況時は新業態や新たな産業が生まれ、個人消費を刺激し回復していく感じがします。企業向けは一度落ちると上がってくるのが遅く見えますね。
早くコロナ騒ぎが収まって、さくっともとに戻ってくれないかな、というのが正直な気持ちですが、ことはなかなか収まりそうにありません。世の流れを読んで、次の一手を慎重かつ大胆に打っていきましょう。
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