事業再生コンサルコラム 2020年11月21日号

どうしたら真似されないか~意匠権を知ろう

今回の事業再生コンサルコラムは意匠権のお話。最近、顧問先さんで新分野進出、新商品を絶賛開発中というところ、意匠権の話がいろいろ出てきましたので、その内容をお伝えしようと思っています。さて、その意匠権の前に、なぜ新分野進出なのかあたりを少々。

 

なぜ新分野へ?

ほとんどすべての中小メーカー、製造業さんは大企業の下請け業務が主体のことと思います。

発注元の難しい注文をこなして納品する(しかも薄利で)、という厳しい厳しい下請け仕事ですが(仕事がいただけるのはありがたいことなのですけど)、長年やってくると、企業の性格として、どうしても図面のものを作る、納品するということに視点が偏りがちになります。また、最終消費者の顔も想像しにくく、仕事の成果がわかりにくいところも負の側面でしょうか。

 

こちら発注が続いているうちは良いですが、外部環境の変化などで発注元自体の調子が陰ってくると、下請け企業は(一緒に潰れるわけにはいきませんから)別の仕事を見つけてこないといけません。

 

そのとき、下請け業務遂行の能力、言い換えれば、「言われたものを作る」だけの能力では、環境の変化に対応することが難しくなります。なぜなら、これから開拓しようとする先は、宿題など与えてくれないからです。「こんなのできない?」などと言ってくれる企業は、知人など余程のことでない限り、まずいません。(いても競合多数)

 

ついては、自分たちが何ができるか、何を得意とするか、どのようなものを作れるかを開拓しようとする企業に能動的に提案しないいけないのですが、宿題体制に慣れた下請け企業は、そのような視点がなく、なかなかそれができないのです。

 

できるためには、何を作るべきか考えることにも慣れておかねばなりません。

どう納めるか、だけでは足りないのです。事業再生、事業の再成長のためにはそういった体質といいますか、それまでとは違う考え方、やり方にトライしていく必要があります。

 

そこで、デザイナーさん連携での新商品開発です。

デザイナーさんはある意味ゼロから1を生み出すお仕事、図面を描くお仕事です。

そのような方と協働することで、新たな視点を経験値として獲得し、本業に活かしてもらうことを狙いとして、新分野への進出、新商品開発を進めています。(もちろん新商品が売れてくれればよりハッピー)

 

デザイナーさんは、数年前に知り合った、中小メーカーに知見のある工業デザイナーさんをアテンドしています。

 

デザイナーさんからのヒントや、その議論から導かれる数多の面白アイデアは、一方その実現のハードルも高いものです。形にするにはもうワンステップ、ツーステップ踏んでいかないといけません。

ただ、プロジェクトメンバー皆さんの創意工夫により、きっとかような難題は解決、実現されていくことでしょう。そして現在、展示会への出品に向け、そのギアを上げているところです。

 

模倣から守るための意匠権

さて、前置きが長くなりましたが、そのような血と汗と涙?の結晶である商品が真似されたらどう思いますか?嫌、なんて感情だけでは済みませんよね。

展示会やウェブサイトに公表すれば、目ざとい業者はすぐにやってきます。

真似されないためには、知的財産権が保護されるよう、自ら積極的に対策していく必要があります。

 

知的財産権には、特許権(特許法)、実用新案権(実用新案法)、意匠権(意匠法)、商標権(商標法)、著作権(著作権法)、育成者権(種苗法)、営業秘密(不正競争防止法)、地理的表示(GI)などがありますが、今回は、そのデザインを模倣されないように、という意味で意匠権について見ていきたいと思います。

 

まず、意匠とは、

・物品

・建築物

・画像

・カタチ・模様(+色)

という2つの要素からなるデザインのことをいいます。

(ただし、意匠権取得には量産可能である必要あり)

 

意匠権を取ると、取ったデザインの実施(生産、使用、販売など)について独占でき、権利侵害者に対して差し止めや損害賠償を請求することが可能となります。

権利期間は、登録出願から最長25年です。

なお、物品の形状や模様等、建築物の形状等、画像であって視覚を通じて美感を起こさせるものが保護の対象となります。(部分も対象)

 

真似されたら嫌!なわけですが、自分が作ったものが実は他人の空似だったなんてことがあっては困りますね。なので、出願前には先行意匠調査を行っておきましょう。

既に同じような意匠が公開されている場合には、登録を受けることができません。

もちろん、意匠権が設定されているものを無断で使うと意匠権の侵害となる可能性があります。

 

 

意匠出願から登録まで

ここで出願から審査、登録までの流れを見ていきましょう。

意匠審査のフローは、

 

先行意匠の調査

意匠出願(登録願の作成・提出)

方式審査

実体審査→拒絶理由通知→拒絶査定

↓      ↓

登録査定←意見書・補正書→拒絶査定   

登録料納付

設定登録(意匠権の発生)

 

となっています。

(意匠権の設定の登録が終わると、意匠公報が発行されます。)

 

意匠権を持つと、登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有することができます。

(登録された意匠と同一及びこれに類似する意匠にまで効力を有します)

 

ただ、なんでも意匠登録できるかというとそういうことではなく、いろいろと要件があります。

以下紹介しますと、

 

1.工業上利用できる意匠であるか

2.今までにない新しい意匠であるか(新規性)

3.容易に創作をすることができたものでないか(創作非容易性)

4.先に出願された意匠の一部と同一又は類似でないか

5.意匠登録を受けることができない意匠ではないか(不登録事由)

・公序良俗を害するおそれがある

・他人の業務に係る物品、建築又は画像と混同を生ずるおそれがある

・物品の機能を確保するために不可欠な形状若しくは建築物の用途にとって不可欠な形状のみからなる

・画像の用途にとって不可欠な表示のみからなる

6.意匠ごとに出願しているか(一意匠一出願)

7.他人よりも早く出願したか(先願)

 

となっています。

工業上利用できる、というのが特許や実用新案にはない特徴ですかね。

登録しようとするものが要件に該当するか確認しておきましょう。

 

最後に出願・登録にかかる費用ですが、出願に16000円、登録料1~3年目まで毎年8500円、以降25年まで毎年16900円

となっています。弁理士さんに頼むとこれに弁理士さんの報酬(5万円くらい?)がプラスされることになります。

特許がウン十万円かかるという前知識からすると、お手軽に感じます。やらない手はないですね。

 

さて、ざくっと意匠権、意匠登録についてご案内してきましたが、意匠権のイメージが共有できましたでしょうか。

 

意匠登録せずに真似されて、真似したほうが意匠登録してしまうと、偽物が本物になってしまうという至極残念な状況に陥ってしまいます。

そのようなことのないよう、新たな商品をデザインし、販売していくことに決めたら(費用もそれほど高くはありませんし)忘れずに意匠登録出願をしておきましょう。

 

当事務所では顧問先さんより、意匠や特許、商標等のご相談があった場合、日頃連携している弁理士さんをご紹介しています。

もちろん弁理士事務所には同行し、打ち合わせにも出席します。ありがたいことにどうやらご安心いただいているようで、顧問である意味もあったなと思う今日このごろです。

 

 

参考:特許庁HP知的財産権ページ

https://www.jpo.go.jp/system/basic.html

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『中小企業経営者と”ともに歩む”』

池田ビジネスコンサルティング

 

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