大塚家具さんのお家騒動、経営に携わるみなさんはどう見ましたか?
創業者である会長さんと娘である社長さんとの対立は、経営方針の違いから双方が相手方の退任を主張する泥仕合となりました。最後は株主総会での決議で決着をということになり、結局、娘さんの勝利に終わりました。
ただの一企業のお家騒動にもかかわらず、この話題はマスコミさんを賑わせましたね。
娘さんの理路整然とした受け答えと感情をむき出しにした会長さんとの対決は、双方の色がはっきり違う、パッと見、分かり易い対立構図でもありました。この分かり易さもマスコミ受けした理由でしょう。ある意味、出来の悪いドラマみたいでしたよね。まさに事実は小説より奇なり。
かくいう私も興味深くこの対立を眺めさせてもらいました。株主ではないので直接議場にはいけませんでしたが、それぞれの主張は公になってますのでそちらを読んでみました。
娘さんは、さすがコンサル出といいますか、すごくまっとうな事業計画、ご提案です。
きちんと分析して、どこに力を入れていくのか、何をするのか、きっちりくっきりわかります。失敗の可能性が低そうですね。
お父さんである会長さんは、創業者だけに(成功体験に基づいた?)原点回帰的な提案です。
何をしたいのか、なぜするのかよくわかりません。とどのつまりは単に娘社長を替えたいだけの感じに見えます。
どっちがまともか、ということでは圧倒的に娘さんに分がありますね。
うまくいくかどうかは別にして。
大塚家具さんは現在、IKEAなどのデザイン性がよく、価格も手ごろな家具に押されてるわけです。
構造的な変化が起きているわけですね、新規参入という外的要因で。マーケットを食われるわけですから、当然に業績も落ちてくる。なんとかしなければなりません。
なので、娘さんは、今まで行ってなかったところ(中・低価格帯)に行って売上を作る必要がある、売り方もその場所にあったものに変えなければならならない(つまりは会員制からの変化)、と言ってます。当り前過ぎて反対のしようがないほどです。
一方、お父さんの方は、あくまで高価格帯で勝負し、接客の強化で業績の回復を狙うとのこと。会員制も維持する感じです。要は気合いが足らないからダメなんだ、ということですね。
しかし、そもそも、大塚家具さんの優位性は丁寧な接客なのでしょうか。
どちらかと言えば、価格表示が不透明だった業界で、最初から値引いた金額を提示する販売方法を始める、という流通革命を起こしたことが成功の源、優位性だったはずです。
会員制は値引きによる業界内の反発をかわすための、あくまで逃げ口上(誰にでも値引きするわけではない、エンクローズされているので。)でしかなくて、丁寧な接客などというのは後付けの理屈でしょう。(ただ、来店者に記名してもらうことにより、結果的に積極的な営業をかけやすくなり、販売力がついた、ということはあると思いますが。)
うまくいってたのに、強力な新規参入があったため、市場に変化が起きた。
客が新興企業に流れ、伴い、売上が減少した。
さて、これをどうやって挽回するか。
その方法で父娘は異なるわけです。
娘)違うポイントにも釣り糸を垂らす
父)同じポイントで釣り方を工夫する
どっちが正しいか答えは出ませんが、そのポイントにもうお魚がいなかったらお父さんは一生釣れませんね。釣り方の問題ではなく、そもそもいないわけですから。無理な話です。スーパー営業マンをいくらもてはやしても、結局、個のチカラだけでは、市場全体の変化に最終的に抗うことはできません。
しかし、娘さんの作戦である違うポイント移動作戦も、移動先が確実に釣れるかというとそうとも限りません。どこそこでは釣れているという釣り場や釣り方、釣れている魚の種類などの情報がすべてであるわけですが、釣ってみないことにはわかりません。とはいえ、情報を分析すれば釣れる確率は高められそうです。
実際、どっちの提案が正しいの?という問われれば、どっちも正しいです。
究極に答えはありません。やってみなけりゃわからんのです。
とはいえ、確実性ということでは娘さんの方がありそうです(に見えます)ね。
ということで、最終的に株主さんは娘さんを選んだんだと思います。
ただ、創業者である会長さんの気持ちもわかってあげたい気もするんです。
自分が大事にしているもの(それが正しいか正しくないかは別にして)を否定されるわけですから、まず第一に絶対良い気はしませんよね。
一代であそこまで大きい会社に育てた人ですから、時代の流れや応じてやるべきことは、言われずともわかっていると思います。(だから娘を呼んで社長に据えた)
ただ、身体がついてこないのでしょう。
私の感想として、娘さんとてもインテリジェンスのある方で、理知的なんですが、経営者としてホンネのところどう思うか、その先には何があるのか、という背骨の部分が娘さんから見えなかったのが残念な気がします。
言い換えると、正しい答えとかどうとかいう問題じゃなくて、自分はこれをやりたいんだっ!という経営者としての強い思いですね。人を引き付ける、社員が付いてくる、魅力というのはそういうところから出る気がするんです。本田宗一郎さんとか。それが結局会社全体のパワーになるような気がするんですね。
中小企業だと、大企業よりもより社員各人の業績影響度が高いわけですから、そういった社員をぐいっと引っ張っていけるような、ついていきたいと思ってもらえるような人間的魅力が備わってないと業績を伸ばすのはなかなか難しいですよね。理屈だけで心は動かせません。
結局、今回の大塚家具さんの騒動から、私的には、儲けの先に何があるのか、成功の向こう側に何があるのかを見せるのが経営トップの役割なんじゃなかろうか、と思うに至りました。
みなさんはどう思われましたか?
池田
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