経営コンサルタントコラム 2014年10月27日号

会社法改正に係る再生スキームへの影響(1)事業譲渡

今年の6月に会社法の一部を改正する法律が成立しました。

1年半以内に実施されるとのことなので、遅くとも来年27年中には施行される予定です。


そこで、今回は改正された会社法に関して、事業再生手法がどのような影響を受けているかについて見ていきたいと思います。


具体的には債務切り出し、切り離しに関する事業譲渡や会社分割の手法について、です。


事業譲渡や会社分割は、債務を旧会社に残し、事業を新会社に移転させることで、既存の債務を切り離し、債務負担なく、事業を再生させるための手法です。


普通に考えれば、とんでもなく債務者にとって都合のよい話なので、当初はむやみやたらに実行されましたし、当然たくさん裁判にもなりました。


とはいえ、基本的に債務負担の回避を狙って、(債権者に)黙って債務を切り離すようなやり方は、事業譲渡でも会社分割でも裁判では結局は認められませんでした。(当り前といえば当り前ですが)


しかし、認めません、という答えが出るまで、このようなスキーム、手法が出てきてから10年くらい経っているかなと思います。つまりは法律的にだめだとは書いてなかったわけですね。


だから裁判になった。


今回の会社法改正によって法律的にどうなるのか、事業譲渡、会社分割の内容も含めてお話していきたいと思います。


まず、事業譲渡ですが、だめ云々の前に、以前から詐害行為として取り消す権利が債権者にはありました。これを詐害行為取消権というのですが、タダで譲渡したり、安く譲渡されたりするとちゃんと

回収できないじゃないかっ、権利を害されている!なので元に戻せ!と言う権利です。


とはいえ、言われなければそのままスルーで取引成立変わらず(取消しと無効の違い)、ということなので、気づかれなきゃオッケーです。(そんなことはないと思いますが)


なので、譲渡する方もする方で、一応、詐害行為と言われないようにしなきゃダメだな、という意識がありました。ので、“余程”の方でなければそれを無視して実行に移すことはありませんでした。つまり、債権者に対しても申し開きが立つような恰好にはしていたわけです。


そもそも事業譲渡というのは事業を譲渡するので、譲渡の対価が必要になります。

利益がきちんと出ている事業を譲渡すればそれなりの「値段」がつくわけです。

事業価値が無いような事業を譲渡するなら値段は付きませんが、そもそもそれで再生しようという事業ですから、大なり小なりの値段は付きます。


この代金を以て、事業を譲渡し、債務だけが残った旧会社は、債権者に返済することになりますから、この代金を支払えないとなると事業譲渡というやり方は選べません。

支払のやり方、というのもあるので、一概に選べないとも言えないのですが、基本的にお金を用意できないと、事業譲渡のスキームを実行するのは困難です。


というのも、少しでも多く回収しようという、債権者の納得が得られないわけですね。

納得が得られないとなると詐害だ!と取り消されてしまうので選択できない、という答えになります。


とはいえ、会社分割と比べ格段にスピーディーに事業の切り分けが完了できるので、事業譲渡はとても使い勝手の良いスキーム、方法でした。


しかし、債権者を害するような(つまりは債務逃れ的な)事業譲渡ついては、今回の会社法の改正でしっかり法律上、ダメですよ、意味ないですよ、という規定((新)法23条の2)となりました。


何と書いてあるかというと、詐害だから取り消せ、というのではなく、事業譲受会社にも返済を請求できる、つまり、債権の承諾なしに債務を旧会社に残して事業だけ移す~ようなやり方をしても、新しい会社にこれまでと同様に請求できるので、事業譲渡の意味はないですよ、という内容です。


となると債権者にだまって、などという戦法はもう(既にかもしれませんが)通用しなくなります。


(つづく)



池田


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