インターネットを検索すると、いまだに会社分割で再生、などと言っている方がいるようですが、既に最高裁判例が出ている通り、債務逃れの新設分割は詐害行為取消の対象となります。新設分割自体が取消されてしまうわけですから、今現在では原則意味の無いものです。
債権者の同意を得た上で行えばそれでも使えるスキームではありますが、巷でいうところの「会社分割による再生!」は、負債(借入金)は元の会社に残して、事業を新しい会社に移転させ、債務の無い、あるいは軽い状況で事業を継続する、債務逃れ目的の、債務者に都合のよいものです。債務逃れ目的だから詐害行為取消の対象だよ、と裁判所が決めたので、このような目的にはもう使えない手法です。
使えない、ということでさらに言うと、今の時代、すでに会社分割だけでは再生できない事態になっています。
会社分割による再生の条件は、営業利益が出ている、もしくは、ちょっとコストダウンをすればすぐに利益が出ることです。事業は回っているので、とりあえず債務さえなんとかすれば再生できる、一昔前のバブル型破綻・再生のパターンに会社分割は有効な手法です。
しかし、今はその営業利益が出ていない。事業を切り分けても営業利益が出ていないから新しく分割した会社も赤字になって潰れてしまう。つまり、意味が無いわけです。
弁護士さん向けの再生マニュアル本で営業利益が赤字の場合は再生の見込みがないので破産に移行、と書いてあるのを見たことがあります。そう単純じゃないだろう、と思います(営業利益が出ていない中身とその理由次第では再生可能)が、営業利益が出ていないとは、つまりそういう意味なのです。
会社分割による再生スキームが判決で使えなくなった云々はありますが、実際のところはもうすでに斯様な外科手術的再生スキームは通用しないのですね。どちらかといえば、生活習慣病を治すような地道な治療(改善)が必要とされています。
例えば糖尿病の方がいらっしゃるとして、食生活の改善は勿論、定期的な運動や、はたまたそれを継続するための意識改革までしなければなりません。どこかを切除すれば良くなる、というものではないわけです。どうしてそうなったのか?という根っこの部分にフォーカスをして、それを改善しなければ悪化の一途をたどります。ある意味面倒くさい病気なのですね。
会社も同じです。キャッシュフローの改善をし、無駄なコストを省き、経営体質を強化する再生プランを練り、それを実行できる能力や、意識を高める。窮境に陥った原因を突き詰め、それを改善し、再発を防ぐ。新たな収益源の種を蒔き、育て、収穫する。これはとても地味で、しかも長い道のりです。しかし、それに狼狽えているようでは結局のところ再生はしません。安易な方向、方向に走っていき、結局会社を潰します。もしかしたらそれが会社を窮境に陥らせた原因かもしれません。
窮地に陥った経営者の方はとかく、目に優しい、「これなら確実に再生できる!」とか「これを使えば絶対再生できる!」など甘い言葉に弱いものです。精神的に参っている部分もあるでしょうから、いたしかたない面もありますが、確実で絶対的な方法などありません。もしそのような方法があれば潰れる会社は世の中にひとつもないでしょう。会社分割での再生もそのような甘い戯言のひとつとなりました。
法律の抜け穴を使った債務逃れの再生手法(本当の意味で再生ではありませんが)は、バブル崩壊直後はいざしらず、今はもうありません。債権者が本気で対抗してきたら必ず負けます。
再生に詭道なし。
問題から逃げることはできません。
真正面からぶつかって突破するのみです。
池田
次の記事▶倒産回避から再成長へ
前の記事◀損益分岐点の計算方法と意味
会社再生、M&A、資金調達他経営コンサルティングのご相談は、
『中小企業経営者と、ともに歩む。』
池田ビジネスコンサルティング