お久しぶりの事業再生コンサルコラム、今回は知る人ぞ知る組織弱体化の禁忌集、サボタージュ・マニュアルの内容をご紹介したいと思います。
さて、サボタージュ・マニュアルという言葉を見聞きされたことはありますか?
こちらはCIAの前身組織が作成した「組織をうまくまわらなくさせる」ためのスパイマニュアルで、第二次世界大戦の終盤、1944年に作られたものです。
そもそもは秘密資料で2008年に公開され、広く知られることとなりました。
原題を「Simple Sabotage Field Manual」といい、工作員向けに敵国弱体化のための妨害行為の方法論とその実践手法を示したものとなっています。
暴力的な妨害行為のほか、組織の弱体化を狙った内容の記載もあり、会社経営においても参考になるといわれています。
特に日本の組織体制においては、当てはまる点も多く、組織運用の禁忌として広く知られています。
さて、前置きはこの辺にして、実際どうすると弱体化できる、といっているのでしょうか。
では、これをやったら弱くなるよ、というところの具体的な内容を見てまいりましょう。
第一に組織全体や会議の運用方法について、です。
・すべての関係者への根回し
・話が長くて、しかも頻繁
・更なる調査と検討を求める
・会議体をむやみに大きくする
・無関係な問題の提起する
・すべての話、書類の言葉尻りをとらえ、正確な文言を要求する
・前回決定済の内容の妥当性について蒸し返す
・注意をするよう提唱する
・決定権限の有無について問題を提起する
要はグダグダと時間ばかりかけて物事を決めない、先送りするようなことをしてると弱体化するということですね。
読んでいるだけでイライラします。
第二にマネージャー階層での組織弱体化行動です。
・上司に指示書を要求する
・不明な指示に延々と質問を繰り返す
・完全に準備ができるまで納入せず、納期を遅らせる
・新たな仕入れは在庫がすべて無くなってからする
・仕事の割り振りは重要でないものから始める
・誤送付が起きるよう、道順を間違える
・新人には誤解を招くような指示をする
・やる気のない労働者を出世させ、やる気のある効率的な労働者を差別し不平を言う
・重要な作業があるときに会議を開催する
・事務処理を増やす
・承認プロセスを複雑化、多層化する
・最後の一文字まで規制を適用する
はい、こちらもグダグダ系ですね。
いわゆるお役所仕事っぽいイメージですが(役所の方すみません)、いじわるや理屈に合わない行動、時間を無駄にするようなことをする組織は弱体化するようですので、やめましょう。
次は事務職員について。
・誤発注をすること、住所を間違えること
・本社、本部と連絡を密にすること
・書類の提出ミスをすること
・余分なコピー作業を行うこと
・上司にかかってきた重要な連絡を上司に回さないこと
・連絡を後回しにすること
・不穏な噂を広めること
これはサボりと凡ミスするな、という感じ。
実務に近いところがサボったり凡ミスばかりの組織はそりゃあ弱体化しますよね。
最後に労働者。
・ゆっくり作業すること、動きの数を増やすこと
・できるだけ作業を中断すること
・指示がわかっていても理解していないふりをすること
・指示を繰り返すよう頼むこと、職長に不要な質問をせがむこと
・うまくできない理由を道具のせいにすること
・新人や熟練度の低い人に技能や経験を伝えない
・書類の書き方を間違えること
・従業員の問題を経営陣に提示し、経営課題であることを認識させること
・段取りを間違えること
・不合格品と合格品を混ぜること
こちらも事務職員と同様、サボりと凡ミス、時間泥棒というところ。
以上4階層で組織が弱体化する行動例をご覧いただきました。
全般流れているところは、時間を無駄にすることが組織を弱体化させる、ということだと感じましたがいかがでしょうか。
難しいのが、事例のような行動をとっている人が「天然」だということですね。
むしろ「私は有益なことをした」と悪気がないのがまた困る。
良かれと思ってやってることが組織にとっては弱体化のなにものでもない、という笑えない状況。
でもよくあると思うんです。
それを正せるのは上位層やトップだけ。(もちろん自分がそうなってはいけませんが)
闘わなければならない敵が外にうじゃうじゃいる中、内部が崩れている暇はありません。
今回ご紹介した事例を反面教師として参考にいただければ幸甚です。
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