事業再生コンサルコラム、今回は少々趣を変えまして、知っておきたい名著の内容をまとめてお伝えしたいと思います。
さて、取り上げますのは、「トヨタ生産方式-脱規模の経営をめざして-(ダイヤモンド社刊)」です。トヨタの副社長を務められた大野耐一氏が書いた、たいへん有名な本です。1978年の刊行なので今から45年前に世に出たものになりますね。工場関系にお勤めの方なら一度は読んだことがあるのではないでしょうか。いや、むしろ読んだことあるのが前提、当然、読んだことがないと恥ずかしい、といった類の本かもしれません。
本の分量的にはそれほど厚みがあるものではないので、1日2日あれば読めてしまいます。が、なにぶん古い本なので、ヨシッ読むかと気合を入れないと読まないかもしれません。
ほかにもいろいろ読みたい、読まなければならない本もあるでしょうし、というところで読んだことがない方に向け、見ればパッとわかる、要約の要約的な内容を以下ご紹介したいと思います。
ある意味“ネタバレ”にもなりますので、読む予定のある人はその点ご注意ください。
では本題に入ります。
・テーマは「少量多品種生産でも原価低減」
先ず、こちらの本のテーマは、「多種少量生産において、原価低減を実現するために何をすべきか」
というものです。あっちを立てればこっちが立たずの命題ですが、45年前にも今と同様の悩みがあったのですね。事業再生のような局面でも参考になりそうな話です。
ちょうど高度成長の勢いも弱まり、さらにはオイルショック後ということで、作れば売れる時代からの転換期ということだったのでしょう。課題解決の基本思想としてうたわれているのは、「ジャストインタイム」と「自働化」です。
・手段としての「カンバン」
ジャストインタイムとは、月末追込み型の生産スタイルからの改善を目的に考えられたもので、最終組み立てラインを出発点に前工程へさかのぼることにより行われます。
そのための手段(管理方式)として、有名な「カンバン」(長方形のビニール袋に入れた一枚の紙:引取り情報、運搬指示・生産指示情報記載)方式が採られました。
外注部品の引き取りだけに使うと、本来の役割(改善目的)から外れてしまい「凶器」となるので注意すべきとも書かれています。
単なる在庫の押し付けはダメよ、ということを示唆しているのでしょう。
・自動化は自「働」化
自働化についても言及されていますが、ここでは「動」でなく「働」の文字が使われています。意味合い的には、「自分で停まる(止める)機能が付いた装置」を指すようです。
・コストダウンの王道とは
「人と在庫を減らし、設備の余力をはっきりさせ、二次的なムダを自然消滅させることにより原価低減を図る」をコストダウンの王道と言っています。その中で7つのムダ、
1.つくり過ぎ
2.手持ち
3.運搬
4.加工
5.在庫
6.動作
7.不良
の徹底的な排除に言及しています。
ムダ排除にあたっては、原価低減に結びついてこそ、一人の能力向上から全体として成果があがるように考える、とされています。
具体的な成果としては、プレス加工の段取り時間が20年で1/100に圧縮できた例や、フルワークシステム(標準手持量が常に保持される、工程連動状態の機械稼働)の導入があげられています。
その中で改善の基本的考えとして、
「人間の能力を十分引き出す」
「働き甲斐を高める」
「オーソドックスな」
「総合的な経営システム」
であるべきと書かれています。
反対は、「能力を求めず、やる気を醸成させない、奇をてらった、部分的な経営システム」ですね。なにかどこかで見たような内容ですが、たしかにこれはだめそうです。
コンピューター利用の是非については、便利だが過剰な情報は抑制されなければならないとし、過大なコストや非適切なタイミングに憂慮されていました。当時の事情と現在ではかなり環境や進歩が異なるので前提が異なりますが、過剰な情報という視点は面白いですね。
目標は大衆車であり、乗用車工業を完成し、売れる値段の自動車をつくること。
メーカーの計画を生かすものは販売力。基礎資材工業の確立も重要。
売れなきゃ始まらない、というのがトヨタさんらしいですね。
いいものをつくるには材料から、というのもまた真理。
・真の「効率」とは
量とスピードではない。トヨタ生産方式においては、つくり過ぎを抑える、市場ニーズに対応できることを指す。
ムダをなくして売るために効率化する、という思想ですね。作るより売るが先に来るのがここまで会社が大きくなった所以かもしれません。しっかりしてます。
以上が本著作「トヨタ生産方式-脱規模の経営をめざして-」をざっくり、エッセンスをまとめたところになります。こちらを読んで興味が湧いたというかたは、決して学術的な難しい本ではありませんので、ぜひ本も読んでみてください。
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