巷ではコロナ融資が話題となっていますね。そこで、今回の事業再生コンサルコラムは売上減少と借入返済の関係を少々。
新型コロナウイルス感染症流行による景気悪化を受けて、政府は中小企業に対し様々は支援策を行っています。資金繰り対策については特に注力されていまして、コロナで売上が減少した中小企業に対し、コロナ関連特別融資制度などを設け、資金面(融資)での支援を行っています。
※各種支援策パンフレットはこちら↓
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf?20200903
制度開始当初は政策金融公庫に相談や申込みが殺到し、なかなか取り扱ってもらえない時期が続いておりましたが、最近ではそのようなこともないようですね。
いわゆるコロナ関連融資ですが、金融機関でもかなり融通を効かせていただいているようです。なのでそれほど厳しいお話も出ず、かなりスムーズにウン千万、1億、2億と借入れができていました。ありがたいことです。(最近は徐々にしっかり見られるようになっているようですので、おそらく来年は厳しいでしょうね)
コロナが経済的な悪影響を及ぼし始めたのは、世界的には2020年の3月ごろでしょうか。国内での景気悪化が顕著になったのはその時期かと思います。中国においてはすでに1月に大騒ぎとなっていたので、グローバル企業の下請け企業さんなどはもう少し早い時期から売上減少などの影響を受けているかと思います。そこで、売上減少が財務的に会社にどのような具体的な悪影響を及ぼすかについてみていきたいと思います。
売上が減少すれば、(ふつうは)利益が減ります。
大きく売上が減少すると(ふつうは)赤字になります。
赤字になると(ふつうは)お金が減ります。
お金が減るのがつづいて現金が底をつくと、給料や買掛金や手形の決済、家賃の支払や借入返済やらができなくなります。となると、倒産です。倒産を防ぐためには現金を減らさないように努めなければなりません。つまり、なによりキャッシュが大事。
コロナ特別融資もキャッシュの確保に関して多いに貢献してくれたところと思います。が、だからといって手をこまねいていると、結局この借入れが負の効果を及ぼすことになってしまいます。
たとえば、月売上3,000万円の製造業さんがいるとしましょう。
手持ち資金が5,000万円、もともとの借入が1億円(10年返済、金利2%)あったとして、
費用と利益はこんな感じです。(カッコは売上比)
売上高 3,000万円(100%)
仕入 1,200万円(40%)
労務費 450万円(15%)
外注費 450万円(15%)
製造経費 300万円(10%)
販管費 450万円(15%)
営業利益 150万円(5%)
支払利息 16万円(0.5%)
経常利益 134万円(4.5%)
法人税等 40万円(1.3%)
税引き後 94万円(3.2%)
特に引当金などはなく、減価償却費が月16万円あったとして、
営業して残ったお金は
税引き後利益94万円+減価償却費16万円=110万円となります。
借入金の月返済が83万円なので、それを引くと、
110万円-返済金83万円=27万円
月で増えたお金は27万円、という会社さんです。少ないながらも内部留保もでき、ぎりぎりではありますがしっかり経営されている会社さんですね。これがコロナの影響で売上が半分になったとしましょう。急に減ったので固定費の削減は追いつきませんでした。その結果は、こうです。
売上高 1,500万円(100%)
仕入 600万円(40%)
労務費 450万円(30%)
外注費 225万円(15%)
製造経費 300万円(20%)
販管費 450万円(30%)
営業利益 ▲525万円(▲35%)
支払利息 16万円(1%)
経常利益 ▲541万円(▲36%)
法人税等 7万円(0.5%)
税引き後 ▲548万円(▲37%)
550万円弱の赤字ですね。
お金はというと、
税引き後損失548万円+減価償却費16万円-借入金返済83万円
=▲615万円
600万円以上減少しました。
これが半年続くと資金繰りがかなりタイトになります。8ヶ月続くと5,000万円あった資金も底をつき倒産です。こわいですね。。
先が見えないので資金準備の余裕を持ちたいところ、世の中的に借入れもしやすくなっていますし、特別融資で1億円借りるよう算段した(10年返済、据え置き期間1年)とします。そんなこんなでうまいこと借入も出来、お金も確保できたので、とりあえずはひと落ち着きです。据え置き期間もありますしね。
さて、1年が過ぎました。現金減少は月▲600万円から月▲300万円程度まで改善に努めたものの、1年で5,000万円現預金が減少してしまいました。手元資金は借入れた1億円が残っています。売上は、コロナも一段落したとはいえ、従前の8割程度の回復にとどまっています。据え置き期間も終わり返済が始まることになりました。
売上高 2,400万円(100%)
仕入 960万円(40%)
労務費 360万円(15%)
外注費 360万円(15%)
製造経費 240万円(10%)
販管費 450万円(19%)
営業利益 30万円(1.3%)
支払利息 32万円(1.3%)
経常利益 ▲2万円(▲0.1%)
法人税等 7万円(0.3%)
税引き後 ▲9万円(▲0.4%)
コスト改善に取り組んだ結果、売上が2割減ってもなんとか営業利益は確保できました。ただし、支払利息が増加したことにより経常損益はマイナスです。お金はというと、新しく借りた借入金の返済が始まり、
税引き後利益▲9万円+減価償却費16万円-借入金返済166万円
=▲159万円
と月に約160万円ずつ減っていくことになっています。年間ですと2,000万円弱ですね。営業黒字ではありますが、このままの状態が続くと、5年でキャッシュが底をつき倒産します。
なので、考えなければならないのは、借入金返済をどうするか。
売上が回復するのに掛けるのもよいですが、確実ではありません。お金がなくなれば会社は潰れてしまいますので、不確実な方法論は意気込みは良しとして、選択できません。ついては、借入金の返済額を少なくする一手。俗に言うリスケを借入先金融機関にお願いするということになります。
リスケをお願いするにしても、2億ある借金をどう返していったらよいのかを考えなくてはなりません。しかし、2億の借入があるとはいえ、まだ1億円は手元にあります。そこで、必要運転資金を2,000万円として、借入金2億円-(手元資金1億円-必要運転資金2,000万円)=1.2億円をどう返すか考えます。
20年で1.2億円を完済するには、1.2億円÷240回で、月50万円の返済ができれば良いわけですから、(税金を考慮すると)90万円分コスト削減余地があればOK。損益状況を見ると、販管費が以前のままとなっています。ここをコロナ前と同様の売上比15%まで圧縮できれば、ちょうど90万円ほどコスト改善ができます。身の丈に合わせた金額にする、ということですね。
ついては、販管費中の改善シロを見つけて削減を実行していきます。今回の事例だと2割削減の目標ですね。これができれば、税引き後でも60万円ほど利益が残ります。その8割は48万円ですから、手元にも多少残しつつの50万円返済の理屈が成り立ちます。きっと金融機関も返済期間の変更(リスケジュール)をのんでくれることでしょう。
リスケ交渉が済んだら、あとは売上回復をどう果たすか、再成長していくかという骨太な課題と向き合うことになります。回復・再成長が果たせれば、リスケ問題など気にする必要はなくなります。売上が増え、利益が以前の倍の200万円になれば、それこそ10年で完済できてしまいます。そのときは銀行からもっと借りてくれとお願いされることでしょう。
ポストコロナ時代に存在し続けられるのは、そのような会社と思います。
中小企業経営者の皆さんには、まだまだ厳しい状況のところも多いと思います。
情報のアンテナを張り、知恵を絞って、どうにか生き残ってまいりましょう。
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『中小企業経営者と”ともに歩む”』
池田ビジネスコンサルティング
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