経営コンサルタントコラム 2016年8月10日号

2016年版中小企業白書まとめのまとめ③

 

さて、今回は中小企業と金融機関との関係からスタート。

以下、中小企業の収益性や経営者の特徴についてまとめられています。

 

2-5.中小企業の成長を支える金融

 

(1)金融機関からの貸出状況

中小企業が成長投資を進めるためには、資金供給が必要。

現状、中小企業の資金繰りや中小企業に対する金融機関の貸出態度は改善傾向にある一方で、金融機関から中小企業への貸出は、大企業ほど増えていない

 

(2)金融機関借入が増加しなかった背景

近年、大企業は内部留保のみならず、金融機関借入、増資等を活用し、海外を中心とした関係会社への投資等を進めた

一方、中小企業では、金融機関借入は増加せず、設備投資等も小幅な増加に留まった。

 

・2005年→2014年の資産・負債の変化

〈固定資産〉

中小企業 +4.4%

大企業  ▲6.1%

 

〈投資等〉

中小企業 +9.0%

大企業 +68.1%

 

〈借入〉

中小企業 ▲3.1%

大企業 +21.5%

 

(3)無借金企業の現状と課題

金融機関借入のない無借金企業が増加傾向だが、無借金企業は、ある程度借入れのある企業よりも利益率が低くなる傾向。

それは、無借金企業が投資にに積極的でないことや、金融機関を含めた外部との関係が希薄であることによるものと考えられ、こうした企業も賢く資金を調達し、成長に向けた投資を検討すべき。

 

(4)資金調達手法

中小企業にとっては、金融機関は最大の資金調達先。

金融機関は今後、事業性評価に基づく融資に重点を置く考えであるが、現状は財務内容、会社や経営者の資産余力を評価している。

事業性評価に基づく融資を実現するためには、まずは企業が今後の事業計画等を積極的に伝えていくことが重要である。

 

・金融機関融資手法志向の変化(現状→将来)

事業性評価に基づく融資   60%→61%

売掛債権の流動化による融資 12%→50%

動産担保による融資     13%→49%

知的財産担保による融資    2%→41%

代表者等の保証による融資  39%→8%

信用保証協会の保証付融資  86%→25%

不動産を担保とする融資   51%→10%

 

(5)支援体制の強化

事業性評価に積極的な金融機関は、企業のニーズに応えるため、外部機関との連携にも取り組み、貸出案件の拡大等の効果を得ている。金融機関は、中小企業から相談を受けることが多い士業等専門家等の関係者と連携を深め、事業性評価に基づく融資や、企業の成長に向けた非金融面での支援を実施していくことが重要。

 

2-6.中小企業の経営力

 

(1)収益性

稼げる中小企業の特徴をみるため、中小企業を利益率と自己資本比率の観点から分類、分析すると、利益率では中小企業の二極化が進んでいる。

 

・分類別売上高経常利益率

9.35%(自己資本・利益率ともに大企業の平均より高いグループ)

8.16%(自己資本は劣るが、利益率は大企業より高いグループ)

1.41%(利益率は劣るが、自己資本は大企業より高いグループ)

1.12%(自己資本・利益率ともの大企業の平均に劣るグループ)

 

(2)投資

実際の投資行動に着目すると、高収益企業は積極的に投資しており、情報セキュリティなどのリスクへの対応も進んでいるが、低収益企業には投資に保守的な傾向が見られる。

 

(3)経営者の特徴1

企業風土については、高収益企業の方が、計画的かつ積極的に新たな試みに挑戦する傾向がある。

また、投資行動を決定する経営者の年齢に着目すると、中小企業の経営者は高齢化してきており、新陳代謝が進んでいないことがわかる。(過去20年間で経営者年齢の山が47歳から66歳へ移動

 

(4)経営者の特徴2

経営者年齢が上がるほど、投資意欲の低下やリスク回避性向が高まる

実際に、経営者が交代した企業の方が、わずかながら利益率を向上させていることから、計画的な事業承継が重要。

 

・経営者の年代別意識

〈積極的に投資していく必要がある〉

49歳   以下 32%

50~59歳以下 27%

60~69歳以下 26%

70歳   以上 21%

 

〈リスク伴ってまで成長したくない〉

49歳   以下 16%

50~59歳以下 18%

60~69歳以下 21%

70歳   以上 25%

 

〈自社の成長は市場の成長に依存している〉

49歳   以下 29%

50~59歳以下 29%

60~69歳以下 32%

70歳   以上 38%

 

(5)長寿企業

中小企業は創業後、20年後には約半数の企業が退出しており、創業後の淘汰の厳しさが伺える。

他方で、市場の環境変化に対応しながら、長期的に経営が安定している企業も存在しており、変化に対応していく柔軟な事業転換や新規市場の開拓が重要である。

 

 

☆ひとこと

・たしかに借金をしないと安全性は高まる反面、成長スピードに劣るということはあります。ただ、利益率が低い傾向というのは無借金とは関係がないように思えます。

・自己資本は利益率の高低に関係なく、利益率の良し悪しが二極化しているということでしょう。

・経営者の高齢化も問題ではあるが、それよりも事業意欲の低下や、積極性に欠く経営姿勢のほうが問題。

 

以上、3回にわたりました2016年版中小企業白書まとめのまとめは終了です。

皆様、どのような印象でしたでしょうか。

 

全面的な利益上昇のところ、大企業の売上が伸びている反面、中小企業の売上が減少しているのは驚くと同時に、現場感としては納得のところでした。

 

どんなに景気が良いときでも、潰れる会社は必ず存在します。

やはり、自社の強みを磨き(無ければ作り)、存在価値を高めていく努力がなければ淘汰されるのは自然の摂理。

 

(お客を)求める企業から、(お客から)求められる企業にならないといけませんね。

 

池田

 

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