前回は中小企業数や収益状況等について見ました。
今回は中小企業を取り巻く環境からスタート、IT投資に関する話に進みます。
2-1.中小企業を取り巻く環境
中小企業を取り巻く環境を概観すると、人口減少が進んでいるなか、ITの普及に伴い電子商取引市場が拡大。
さらに近年では、訪日外客数が増加。また、我が国では、自然災害発生頻度が増加傾向にある。
2-2.生産性向上のためのITの利活用1 IT投資の現状・効果
自社ホームページを活用している中小企業は半数以上だが、売上拡大につながる電子商取引等の導入は遅れている。
ITを活用している企業は活用していない企業と比べて、売上高及び売上高経常利益率の水準が高い。
・IT投資と業務実績の関係
〈売上高〉
IT投資あり 2,369M
IT投資なし 1,140M
〈売上高経常利益率〉
IT投資あり 3.0%
IT投資なし 2.7%
2-2.生産性向上のためのITの利活用2 IT投資の課題
中小企業の課題の中には、自社の経営状況の的確な把握等、IT活用が解決策となり得ると考えられるものもあるが、IT人材不足や効果がわからないこと等を背景にIT投資が進んでいない。
また、必要なIT人材確保が進んでいない。
2-2.生産性向上のためのITの利活用3 高収益企業の取組
高収益企業は、付加価値向上のためのIT投資の効果を得ている。
そのために、従業員から意見を聴き、業務プロセスの改善や研修などの人材育成に取り組みながら、計画的にIT投資を行い、さらに投資の事後評価も実施している。
・IT投資の効果を得るために有意であった主な取組
業務プロセス・社内ルールの見直し(65.9%)
目的・ビジョンの明示(58.7%)
各事業部門、従業員からの声の収集(49.3%)
計画策定(48.5%)
社員教育研修の実施(37.6%)
2-3.売上拡大のための海外展開1 海外展開投資の現状・課題
国内市場が縮小し、また、海外の中間層・富裕層が増加する中。海外需要の獲得は重要。現状、海外展開を行う中小企業は、中期的に見れば増加傾向であるが、知識・ノウハウ不足や人材不足といった理由を背景に伸び悩んでいる。
2-3.売上拡大のための海外展開2 海外展開投資の効果
海外展開を行う企業は、売上の拡大、海外の新市場開拓、営業力・販売力の強化といった様々な効果を実感している。
また、輸出する企業の方が労働生産性が高く、海外展開を行う企業は、国内従業者を増加させている傾向にある。
2-3.売上拡大のための海外展開3 高収益企業の取組
高収益企業は、マーケティングや計画策定を進め、外国人を含めた人材の確保・育成を行いつつ、モニタリングを通じてリスクにも備えながら、海外展開を行うことで売上の拡大等を達成している。
・外国人人材有無別に見た売上高
〈輸出〉
外国人人材あり 4,258M
外国人人材なし 2,805M
〈直接投資〉
外国人人材あり 5,394M
外国人人材なし 3,920M
〈インバウンド対応〉
外国人人材あり 3,756M
外国人人材なし 1,808M
2-4.稼ぐ力を支えるリスクマネジメント
(1)リスクへの対策の現状
自然災害の頻発やIT導入に伴う情報セキュリティの必要性の高まりにより、大企業はリスクへの対策を進めているが、中小企業におけるBCP策定率は15%と中小企業の取組は遅れている。
また、サプライチェーン維持のための代替調達についての検討が進んでいない企業が多い。
・情報セキュリティトラブルの被害額
〈全体〉
50万円未満 30.6%
50~200万円 4.4%
不明 9.1%
不発生 55.4%
〈売上高10億円以下〉
50万円未満 55.9%
50~200万円 8.8%
不明 2.9%
不発生 32.4%
(2)高収益企業の取組
稼げる中小企業は、リスクへの対策を行うことで、業務の効率化や人材育成、売上の拡大にもつなげている。
平時の経営改善の一環として、積極的に取り組むことが必要。
今回はここまで。
そろばん→電卓→PC(エクセル)と変化したように、IT投資を怠ると時代に取り残されますね。
投資する・しないで、生産性の優劣が顕著になるでしょう。
次回は金融に関する話です。
池田
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