最近、国等の行政が中小企業の事業承継支援に積極的ですね。
しかし、後継者がいないような会社が無理に事業承継などすべきでしょうか?
そもそも継続して成長するような会社は、後継者のなり手がいないような事態は起きません。
後継者がいない会社は、たいてい過大な負債を抱えていたり、利益が出ていなかったりするものです。しかもその状態を放置している。
たまにそんな会社でも後継者がいる場合があります。
でも、「跡継ぎがいてよかった」などと安心してはいけません。
なぜならその後継者は、ダメ後継者だからです。
いいですか、過大な債務を抱えて、利益も出ていないような会社ですよ?
継ごうと思うなんて、会社の財務状況や外部環境をわかっていない大馬鹿者です。
自分の人生は親父の残りの人生よりも長く続いていくわけです。
断るのが正解です。
そんなこともわからないようでは、継いだとしても先が思いやられます。
逆に、財務状態が至極健全で、利益もきちんと出ているような会社だったら、普通継ぎたいでしょう?賢明な後継者、息子なら、その辺をきちんとジャッジして判断するはずです。
後継者がやる気満々で親父の会社を立て直すんだよ、という意見もあるかもしれません。
また、そうしたい、という後継者もいるかもしれません。
そうして欲しいと思う経営者もいるかもしれません。
しかし、そんなやる気のある若者や働き盛りの大事な息子に、親父がこさえた、返せないような借入金を新人経営者の段階から背負わせるんですか?マイナスからのスタートを強いるのですか?
やる気があって優秀なら、子会社でも別会社でもいいから、起業して重荷なしで商売してもらえばよろしい。親父のセンチメンタルに付き合わせて、息子を不幸にしてはいけません。
合理・客観的な話をしてきましたので、
「じゃ、どうするの?財務状況が悪化しているような会社はどうすればいいの?」
という気持ちになりますよね。
身も蓋もない話で申し訳ないのですが、そんな会社は、基本的に潰れたほうがよい、というのが世のため人のための結論です。
新陳代謝が経済にも必要なのです。
なぜ必要か。
うまくいかず廃業することになれば、そこに新しい芽(ビジネスの隙間)が生まれます。
新しい芽は返済不可能な借入金などなく、成長していけば新たな雇用と設備投資を行っていきます。
つまり、ひとつのビジネスにおいて、開業→成長→停滞→悪化→廃業→開業という経済循環、サイクルが社会経済全体の成長に繋がっていくのです。
廃業寸前の会社が自助努力でなく、返済猶予等の外部カンフル剤で生き永らえたとしましょう。
本来撤退すべきものが生き残ってしまいますので、新しい芽も出てきません。
カンフル剤を打っている状況の会社は、金利の支払いで精一杯なので、新規の雇用や設備投資ができません。となると、金利が貰える銀行は儲かるけれども、なにも新しい投資が発生せず、産業としては広がっていきませんね。
撤退・廃業していれば、取って代わる新しい会社が、新たな雇用や投資を生み出すはずでした。
もし財務状況の悪化した会社を承継するなら、過去の債務を切り離した承継をすべきです。
それは全くの新規創業でも、第二会社方式的な別会社で承継してもどちらでもよいです。
要は、「返せないような債務を引き継ぐな」ということです。
抜本的な改善なく、リスケ等の一時的な資金繰り改善で生きながらえるようなことをしてはいけません。社会的にもマイナスです。
具体的には、債務免除が要るわけです。
方策としては、話し合いで行うのが一番(つまり私的に)ですが、破産や民事再生といった法的な方法もあるでしょう。
先般、中小企業庁で事業承継ガイドラインが策定されました。
昨今、金融機関は中小企業の支援機関としての役割を担っています(認定支援機関といいます)ので、中小企業事業承継支援をこのガイドラインに従って行うことになります。
事業承継ガイドラインの概要資料はこちらから↓
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2016/161205shoukei2.pdf
(中企庁「事業承継ガイドラインについて」)
しかし、です。
事業承継支援が必要な、言い換えれば、後継者がいないような会社事業承継には、債務免除など債務の減免が必要なのです。
お金を貸している当の本人の金融機関ができるでしょうか?
矛盾が生じてしまいますね。
金融機関だって私企業です。株主もいます。儲けなければいけません。
債務を免除してしまえば大赤字です。とりあえず返済猶予なら利息は入ってきます。
抜本的な方法など取れるわけがありません。
事業承継に悩む経営者の皆さんは、その辺をよく考慮いただき、相談先を決めていただければと思います。(つまりは金融機関以外に相談して、ということ。)
とりあえず目の前の課題(資金繰り)が解決できればいいや、という甘い考えは捨てましょう。
もしそういうお考えがあるとすれば、それが今のあなたの状況を作っているのです。
“事業の磨き上げ”の本質は、返済猶予による資金繰り改善ではないこと、ぜひ頭に置いておいてください。
後継者が不幸にならないために。
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