経営コンサルタントコラム 2015年9月8日号

「28年度経済産業政策の重点」から考える次の事業戦略

今月初め、経済産業省より平成28年度経済産業政策の重点(こちら→http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2016/index.html)、が発表されました。


「うちは国とか関係ないし。」

「うちは中小企業なんでそんなこと関係ないし。」


と思った人、まちがってます。(キッパリ)


良かれ悪しかれ、日本の経済動向はお役所の考え次第です。バブルしかりバブル崩壊しかり。シカトはいけません。

また、大企業は国発注の仕事をして成り立っている部分も多くありますよね。

中小零細企業はそのような大企業の下請け、孫請けなどわけですから、日本全国津々浦々関係ある話ですね。


なので、「うちの商売はこれからどうなるんだろう?」と心配されている方(つまりは大部分の経営者の方)は国の方針をチェックしておくべきです。


たとえば、ここのところの太陽光関連ビジネスの活況なんかは、まさに国方針による好景気ですから、これを先読みしていればうまいこと良い波にも乗れたわけです。


逆に、蛍光灯を作っていたところなんかは、国の施策であるLEDブームの荒波に押されて、青息吐息です。方針を理解していれば、事前に打てる手もあったはずですよね。


景気の波にほんろうされやすい中小零細企業などは、なおさらチェックが必要であるのは言うに及びません。


では、早速見てみましょう。


平成28年度の経済産業政策の重点は、大きく以下の5つにわけられています。


1.イノベーションによる成長実現-未来投資による生産性革命-

2.経済社会の持続性を高める

3.世界と一体的に成長する

4.安定的なエネルギー環境基盤を確立する

5.福島・被災地の復興を加速する


重視する順番ですが、それぞれの予算額がその重要度を考量する尺度になるでしょう。

予算概算要求額を上から順に並べますと、


1位1兆1319億円 4.安定的なエネルギー環境基盤を確立する

2位  1166億円 1.イノベーションによる成長実現-未来投資による生産性革命-

3位   906億円 5.福島・被災地の復興を加速する

4位   793億円 2.経済社会の持続性を高める

5位   190億円 3.世界と一体的に成長する


となります。

エネルギー関連が図抜けていますね。2位の10倍です(汗)


じゃあ、そのエネルギー関連、中身はどのようなものかといいますと、


○省エネルギー 2429億円

・産業部門での先端的な省エネ投資の大幅な拡充。「設備単位」の簡素な制度の創設。


○再生可能エネルギー 2662億円

・再エネのポテンシャル調査・開発支援、事業化に向けた実証の推進

・固定価格買取制度(FIT)の賦課金減免措置


○化石エネルギー(資源確保と低炭素化の推進) 1728億円


○水素社会の実現(エネファームやFCVの導入支援、水素ステーションの設置等)371億円


○強靱なエネルギーサプライチェーンの構築 2127億円

・製油所等の設備最適化・事業再編、製油所・SS等の災害対応能力強化


○「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」の着実な実施、原子力発電の安全基盤の構築、原子力立地地域への支援 2002億円


とこんな感じになっております。


ちなみに中小企業支援なんかが該当する2.経済社会の持続性を高める、ですが、全体で793億円です。その中でも中小企業対策となると、568億円です。


発表資料ではイノベーションによる成長実現がど真ん中に記載されており、目に入りやすく、重きを置いているのかな、と考えちゃいそうなものですが、予算額を見ると違いますよね。


重視しているのは、そう、エネルギー系です。


この分野にはどんどんお金を入れていきますよー、というお国の方針でございます。

つまり、省エネ、再エネの分野はまだまだお金が流れてくる、ということです。


とはいえ、上記1.~5.の施策はすべて国が重点にしますよ、というものですから、もちろん予算的な大小からその重視度合いは違ってきますが、重点に置くことには間違いありません。


イノベーションという点では、AIやビッグデータ、IoT(Internet of Things の頭文字。モノのインターネットのこと。)、ロボットなんかに注目しているようですし、ベンチャー企業にお金が回る仕組みを構築しようとしています。


地域や中小企業対策は、支援拠点整備やらクールジャパンやらここ数年同じような、代り映えのない施策で残念感は否めません。支援拠点整備しても効果ないと思いますよ、現実的な話。

厳しいこと言わせてもらえば、一応やっています的な、保険的施策ですね。


なので、中小企業を国が何とかしてくれるという発想は捨てたほうがよいでしょう。

自分の身は自分で守るしかなさそうです。


世界と一体成長のところは、輸出促進対策ですね、単純に言うと。


福島支援は除染や廃炉問題も含めてごついお金が動いていますが、この辺はベンチャーや中小企業が手を出せる世界じゃないですからね。

仕切りは大手ゼネコンやら重電メーカーですし、技術的に優れているとかそういうことで関われるような場所ではないので、ビジネスという観点からはあまり注目しなくてもよいでしょう。


まとめますと、省エネ、再エネを中心に、IoT、ロボット関連、というのが国の流れですかね。


事業転換や新事業進出などを目論んでいる企業は上記のような分野に着目して、事業を企画したり、ビジネスプランを描いてみるのもよいでしょう。


お金が流れていないところにいくら良いものを供給しても、売れません。

魚がいない川では、いくら腕の立つ釣り師でも釣り上げることはできません。

自分たちの力ではどうにもならない世界もあります。


モノやサービスにこだわるのは勿論ですが、時機を見る、というのもまた大切ですね。

今回は経産省の28年度の経済産業政策重点のポイントから、今後のビジネスの流れを考えてみました。


それではまた次回。


池田


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